今回の記事では、
脳卒中の方が陥りやすい運動パターン
と、
痙性が強まる「脳以外の」原因
について考えていきたいと思います。
脳卒中の方が陥りやすい運動パターンとは?
脳卒中片麻痺となると運動・動きのパターンの幅が大きく狭まり、多様な動きができなくなってしまう場合がほとんどです。
動きのパターンが減るということは、どのような動きをするときにも同じようなパターンを使ってしまうということ。
つまりいつもいつも同じ動き、同じ筋肉ばかりを使って動作を遂行してしまいやすくなるのです。
例えば、
・腕を上げようとすると、肩が上がり、脇が開き、肘が曲がり、肘が側方へ向くような動きをしてしまう。(肩甲挙筋、僧帽筋、三角筋優位)
・脚を持ち上げようとすると、背中が丸くなる。(大腿直近優位)
・麻痺側の脚に体重を載せようとすると、つま先・膝でぐっと地面を踏みしめ、重心が下がる。(大腿四頭筋、下腿三頭筋優位)
・足の指が強く曲がってしまう(クロートゥ:clow toe)。(長母趾屈筋、長趾屈筋優位)
などです。
このような動作で使ってしまいやすい筋肉の多くが、
多関節筋
であり、
アウターマッスル
です。
(*多関節筋とは、二つ以上の関節をまたいでつく筋肉のことです。 ⇔単関節筋)
多関節筋やアウターマッスルは、強い力が入りやすい反面、動きが非常に粗雑になりやすいという難点があります。
特に多関節筋が働いた場合には、一つの関節を動かしたい場合でも、他の関節も一緒に動いてしまいやすいということになるのです。
アウターマッスルと癒着の関係性
同時に、アウターつまり皮膚表面に近いことから、過剰に力を入れた状態が続くと筋と皮下組織、皮下脂肪との間で癒着を生じさせやすく、この癒着が痙性の出現にも大きく関わっています。
例えば、
・仰向けに寝たときに、脚が伸びきらず、膝が曲がり、脚の付け根(鼠蹊部・股関節)が開かない。
→大腿直筋の過緊張による典型的な症状
・こむら返りのように、ふくらはぎが攣ってしまう。
→下腿三頭筋の過緊張による典型的な症状
などです。
このような部分で癒着が生じている場合、ただ筋肉をほぐす、緩めるようなマッサージだけではその場では軽く動きやすくなったように思えても、時間の経過とともに再び痙性の出現に悩まされることになります。
本当に皮下で癒着が生じているのか確認してみよう!
痙性が出現しやすい、筋肉に過剰に力が入ってしまっている部分の皮膚をつまんでみてください。
この皮膚をつまんだときに、
「痛い」
「皮膚が分厚い」
「硬くて皮膚がつまめない」
「つまむと皮膚がボコボコしている」
ような感じのする場合には、程度の差はあれ、すでに皮膚が癒着してしまっていると考えてください。
特に「つまむと皮膚がボコボコしている」場合、これはセルライトといって皮下脂肪にある脂肪細胞が肥大化、線維化し硬くなった状態です。
『セルライトとセルライトを解消させるための考え方』についてはこちらの記事をどうぞ。
→https://karada-design-lab.com/archives/1869
このセルライトを筋肉からリリースするだけでも痙性の出現はかなりコントロールしやすくなります。
(実際に施術する際には、このセルライトを筋からリリースするだけではなく筋肉と筋肉の間の癒着や筋以外の組織間での癒着もリリースしていきます。)
この癒着をリリースした状態から、身体を動かすリハビリを始めていくので、余計な筋緊張が出現しない状態を保ったまま、質の良い動きを身につけていくことができるようになるのです。
どのようなリハビリを行うにせよ、このようなカラダの準備を怠っていてはなかなか目的とする動作が身につきません。
特に脳卒中片麻痺を抱えた方はこのようなセルライトを発生させやすく、そのセルライトと筋との間での癒着が原因となる痙性にも悩まされやすくなるので施術とその後の運動リハビリもしっかりと質の良いものを提供してくれるセラピストを選んでくださいね。
カラダと姿勢・動きのトータルケアスタジオ
カラダ Design Lab.
カラダデザインラボ
堤 和也
@滋賀県大津市瀬田駅前