カラダ Design Lab.にお越しくださるクライアントの方で、
脳卒中片麻痺の後遺症にお悩みの方が少しずつ増えてきています。
その様な方に対する取り組みの場合、
・何ができて、何ができないのか?
・どの様な要素を引き出していけば、今不自由を感じる動きをより自由に行えるようになるのか?
・円滑な動き、巧みな動きをどのように作り上げていけばよいのか?
などといったことを、非常によく考えます。
より良い動きを築き上げていこうとする際には、必ず目標とする理想的な動きがあって、それに対して足りない部分をリハビリを通して再獲得を図るのですが、
そのリハビリが適切なものとなりうるためには、「目標とする理想的な動きがどのようなものであるのか」という「動きの設計図」に対する理解が非常に重要になってきます。
家の設計図が間違っていれば、そもそも家が建ちません。
動作も同じです。
今日はそんな「動きの設計方法」について考えてみましょう。
「健常」や「正常」は、本当に理想的な状態なのか?
特に病気も不調もないという方、このような方を一般的に『健常』と言いますよね。
健常な方を元に「正常」と言われることが多々ありますが、
この健常・正常な状態にも幅があります。
つまり、病気に近いけれどもなんとか病気を引き起こさずにいる方も、病気とは程遠いところにいる非常に健康的な方もどちらも『健常』ですが、健常の範囲の中でもそれぞれがその両極端にいますよね。
これは病気に限ったことではなく、動作、つまり「動きの質」に関しても当てはまります。
身体を動かしても痛みはないが、一つ間違えば痛みを引き起こしかねないような動きをしている方と、痛みや怪我とは無縁に近い非常に効率的な動きをしている方。
このどちらも痛みのない健常と呼ばれるような方たちですが、その動きの質には天と地ほどの差があります。
片麻痺の方が目指すべきは、「一般人」レベルの動き?
さて、ここから脳卒中片麻痺となり手足の動きが不自由になってしまった方のリハビリについて考えてみましょう。
脳卒中片麻痺により運動麻痺を引き起こしている方は、筋肉にうまく力が入る部分と入らない部分とが顕著に現れます。
力を入れやすい筋肉には過剰に力が入ってしまいやすく、逆に力が入りにくい部分の筋肉はどんどん使わなくなってしまいやすい。
つまり、使いやすいところだけを使って動くような動作を、知らぬ間に学習して身につけてしまいやすいのです。
そしてそれが長期化することでパターン化し、クセづく。抜け出せなくなる。
このような方が、動きを再獲得していくにあたって、どのような動きを理想的な状態として目指していけばよいのでしょうか?
・『正常』と呼ばれる「一般人レベルの動きの質」を目指しますか?
・それとも「正常を超えた理想的な動きの質」を目指しますか?
私の答えは、
「正常を超えた理想的な動きの質」
です。
脳卒中片麻痺の方は、「正常」ではなく、「正常を超えた」動きを身につけろ!
そもそも、運動麻痺によって動きの質・効率が非常に低下してしまっている中で、質の悪さを内包した正常と呼ばれるような動きをわざわざ身につける余裕などないのです。
たいていの場合、過剰に働いてしまいやすい筋肉は、アウターマッスルや多関節筋など比較的大きな形状で、粗雑ではあるもののパワーを発揮しやすい筋がほとんどであり、
逆に働きの弱い筋肉は、インナーマッスルや単関節筋など、比較的小さな形状で、大きなパワーは発揮しにくいけれども精密な動きを司る筋肉がほとんどです。
(私見です。)
効率化された動きを身につけていくために、賦活(活性化)させていくべき筋肉はどちらか?
比較的小さな形状で、大きなパワーは発揮しにくいけれども
精密な動きを司るインナーマッスルや単関節筋などです。
理想的な質の高い動きでは、自然とこのような筋肉が活性化されています。
(私はこの理想的な動きの質を求める上で、古武術や武道、アスリートの身体操作を非常に参考にしています。)
リハビリでもこのような筋肉の活動を活性化させながら、自然とそれらの筋肉が働くように動きのトレーニングを実施していく必要があるのです。
すると過剰な筋緊張が抑制されやすく、働きにくい筋肉も動きを通して筋収縮が引き出しやすくなってきますよ。
目標の設定を見誤らずに、リハビリしていきましょうね。
※※※
麻痺によってどうしても動かない、筋肉を収縮させることができない部分については、この限りではありません。
「動かせる」という状態であれば、その質を高めるためには非常に効率化された動きを目標として、動作を再学習していく必要があるということです。
カラダと姿勢・動きをデザインする。
カラダ Design Lab.
カラダデザインラボ
堤 和也
@滋賀県大津市石山