前回からの続きです。
→骨盤が緩むことの問題点①:仙腸関節を介して体重が上半身から下半身へうまく伝わらない!
CONTENTS
ある程度骨盤が安定してこれば、ベルトを外していても自分自身の力で骨盤を安定させられるだけの能力が必要です。
この、自分自身で骨盤を安定させるために重要な筋肉が腹横筋や骨盤底筋、多裂筋、横隔膜などにあたります。
これらの筋肉は骨盤の深部、腹腔の深部にあり、これらの筋機能が骨盤を安定させるには不可欠なものです。
参考までにこれらの筋肉の骨盤における働きを以下に簡単にまとめてみます。
(やや専門的で少し難しい内容もある上に長いので、線で挟まれた部分は飛ばして読んでも大丈夫です。)
骨盤を引き締め、腹圧を効かせる4つの筋肉
腹横筋
・鳩尾(みぞおち)からわき腹、骨盤まで幅広くついており、腹筋の最も深層にある筋肉。
・骨盤が前方に広がった状態を閉じるように働く。
・左右の骨盤を閉じるように引き締めることで仙腸関節の圧迫力が強まり、関節の安定性を高める。
・腹横筋に上手く力が入ると、胸腰筋膜を介して多裂筋の機能を高めるだけではなく、骨盤底筋とも連動し収縮能力を高める。
・多裂筋など腰背部の筋が過剰に活動し、腰椎の前弯(反り)が過剰となるのを抑制する。
・腰椎の前弯が過剰となると、上半身の重みを背骨と腰背筋のみで支えてしまい腰への負担が大きくなるのに対し、腹横筋が上手く働くとお腹の前に一枚の壁を作り、腹圧を高めることでお腹でも体重を支えることができるようになり、腰への負担を減らす。
骨盤底筋
・字の通り、骨盤の底に広がるようについている筋肉。
・膀胱(尿道)や子宮、直腸などを下からハンモックのように支える。
・骨盤の最も下方で排尿・排便を我慢するときに働く。
・腹横筋などと協調して活動し、腹圧を高める。
・くしゃみや、座った状態から立ち上がる時など、腹圧が高まった際に尿漏れを起こさないためにも重要。
・骨盤内臓器を適切な位置へ収める。
・仙骨が後傾している(尾骨が下がりすぎる)と骨盤底筋が上手く働きにくくなるため、仙骨の前傾位(尾骨が適度に後方へ突き出している状態)が取れていることが重要。
多裂筋
・骨盤の後方で仙骨と腰椎をつなぐ筋肉。
・腰椎と仙骨のアライメント(位置関係)を整え、腰椎前弯位・仙骨前傾(腰から尾骨にかけての反り)を作るのに重要。寛骨に対して仙骨が前方へ傾くと、仙腸関節をつなぐ靭帯の緊張が高まり仙腸関節の安定性を高める。
横隔膜
・肋骨の最下端から背骨まで幅広くついている筋肉。
・呼吸時に働く最も重要な筋肉。
・腹横筋・多裂筋・骨盤底筋などと協調し、腹圧を高めることで、腰部を安定させる。
骨盤がグラグラだと周りの筋肉はどうなる?
しかしこれらの筋肉がうまく使えておらず、骨盤がグラグラな状態のままでいるとどうなるのか?
前回の記事(リンク)でお伝えした通りですが、上半身の重みが骨盤を介してうまく脚へ伝わらない、すなわち適切に脚へと体重がかけられなくなってしまうのです。
すると、上記のような筋肉がうまく働いていない状態を補おうとして、股関節周り(股関節深層外旋筋群や腸腰筋を中心として)や腰周辺の筋肉(脊柱起立錦や腰方形筋、腹斜筋など)を無理やり強く働かせてしまいます。
そのような状態が長く続くと筋肉がカチカチに張ってしまうだけではなく、同時に疲れやすくもなります。腰や股関節、太ももを触れてみて表面がカチカチに張ってしまっている方は、深層の筋肉がうまく働いていない可能性が高いです。
骨盤周囲の筋肉が硬くなって出現しやすい症状とは?
そのような状態では、股関節や膝関節が本来の機能を果たすことができにくくなり、以下のような症状が出現しやすくなります。
・膝を胸に近づけるように股関節を曲げると、脚の付け根が詰まる感じがして痛い
・股関節周囲が常に張ったような感じがする(特にお尻の奥のほうや骨盤の外側、症状の強い人では股関節の前面や太ももの外側、ふくらはぎの外側辺りまで張ったような感覚が出現します。)
・椅子や地面から立ち上がろうとすると、「よっこいしょ」と強く力を入れたり、手で支えないと立てない
・階段を昇る際に脚で上手く踏ん張れない。力が上手く入らない。
など…
産後にぎっくり腰を引き起こしやすくなるのもこのようなことが基盤にある可能性も考えなくてはいけません。
ぎっくり腰の痛みがましになったとしても、このような骨盤周囲が不安定な状態が残存している限り再発する可能性は高くなることも容易に想像できます。
骨盤の問題は、骨盤だけの問題にとどまらない!
このように骨盤の問題であったとしても骨盤以外の部分にも痛みなど様々な症状が出現してしまいやすくなるのです。
症状が様々な箇所に散在している方ほど、全身の状態を良い方向へ戻していくのに時間がかかりやすくなるので、早期からの対応が非常に重要ですね。
骨盤に関わる骨の適切な位置関係が作れるようになれば、筋肉をうまく働かせてその位置関係を崩さないように保持できるようになることが必要です。
そのためには 筋肉を鍛えるだけではなく、姿勢やカラダの使い方も同時に変えていくことで、筋肉がうまく働きやすい環境を整えてあげることも必要となりますが、これは次回以降にお伝えできれば…と思います。
(つづく)
滋賀県大津市石山のリハビリ整体院
カラダ Design Lab.
カラダデザインラボ
堤 和也
出産後の骨盤周辺の痛み、腰・股関節の痛みなどの症状にお悩みの方は是非ご相談ください。
しっかりと引き締まった骨盤を築き、育児に専念できるカラダづくりを一緒に行っていきましょう!
↓