大変期間が空いてしまいました…
癒着に関する記事の続きです。
【前回までの記事はこちら】
→ キズの癒着①:手術後や組織損傷後の癒着とは?なぜこわい?
→ キズの癒着②:実際のキズを見ながら癒着を考える。
骨折に対する手術後の癒着に関して考えた場合、どうしても傷口ばかりに目が行きますよね。
もちろん傷口周辺の癒着に対するケアは非常に大切ですが、傷口ばかりに目を奪われていると見落としてしまう部分があります。
それが手術の傷とは反対側に生じる癒着です。
どのようなことか一緒に考えていきましょう。
CONTENTS
「骨折」そのものが骨以外に及ぼす影響を考える。
それでは今までの流れに沿って、今回も足首周辺の骨で考えてみましょう。
今回は足首周辺の骨折で最も多い「脛骨」と「腓骨」の骨折について考えていきます。
骨の運動学的な働き
骨の運動学的な働きとして主に、
①重力に対抗してカラダそのものの構造を支持するための役割 と、
②筋肉を働かせる土台としての役割
があります。
目に見えない癒着を考えるために、この②について少し掘り下げていきましょう。
脛骨と腓骨の表面(ふくらはぎの奥深く)にはこれらの筋肉が付着しています。
(図では、深層にある筋肉しか示していませんが、これ以外にもたくさんあります。)
これらの筋肉は、この部分から別の骨に向かってつながり、その間にある関節を動かすのです。
骨が折れるとこれらの筋にどのような影響があるのか?
まず骨折した部分に筋肉が付着していると、その筋も同時に損傷されます。
骨が割れた上で引き離されるのですから、筋も一緒に引き裂かれます。
また筋肉そのものが骨に付着していなかったとしても、その骨折した部分の近くに存在する筋肉は骨のズレ具合によっては損傷される可能性がありますね。
これらは骨折した骨が直接的に筋に与える影響です。
しかし間接的にも筋に影響を与える場合があります。
皮膚を切ると出血しますよね。その血が固まることでまず傷を塞ぎ出血を止めようと働きます。
皮膚からの出血であれば血は流れ落ちていきますが、骨折の場合血は流れ去ることができず、その場に留まり続けてしまいます。
するとそのままの状態でしばらくすると血液が固まりはじめ、「血の塊(血腫)」を形成してしまうのです。
ある程度吸収はされるのですが、
この血腫ができる部分では、血腫周辺の組織と「癒着」を引き起こしやすくなるのです。
傷の修復に伴う癒着・瘢痕化とはまた少し異なる原因での癒着ですね。
骨折によって直接的に筋が損傷されていなくとも、骨折部位近くの筋は間接的に癒着の餌食となり得るのです。
では具体的に足首周辺の骨折(足関節脱臼骨折)で考えてみましょう!
足首の硬さは、まず「長母趾屈筋」を疑え!
(つま先の上げにくさ、親指の動かしにくさ)
「長母趾屈筋」は足首の後面の最も深い場所にこのようにして存在します。
なぜ様々な筋肉がある中で「まず長母趾屈筋」なのか?
『長母趾屈筋の硬さ』は、足の親指の動かしにくさに関わるだけでは無く、
「距骨」という足首の動きの最も重要な骨を真後ろから邪魔をすること、
そして筋肉の配置から、足首周辺の骨折では長母趾屈筋が硬くなることはほぼ必発であるからです。
このことから、足首を曲げる動き(背屈)の制限因子となっていることが非常に多い上に、何よりも見落とされがちだからです。
もちろん他の筋や組織に対するアプローチも必要であることは言うまでもありません。
アプローチすべき筋として非常に優先順位が高いということです。
長母趾屈筋に対するセルフエクササイズ
手術後、地面に足を着いて脚に体重をかけても良くなればこのようなストレッチを是非行なってみてください。
(部分荷重中[体重の◯%まで体重を掛けてもいいと言われている]の方は、必ず担当セラピストとともに体重計で確認しながら行なってください。)
↓
この長母趾屈筋の硬さを残すと『clow toe』と呼ばれる状態になりやすく、
足首が曲がると指も曲がってしまうような足になってしまうので入念にアプローチしてみてくださいね。
手術後、体重がかけられるようになった方だけでなく、
数年経過していても「こんなストレッチしたことない!」という方は是非取り組んでみてください。
きっと足首の硬さが変わっていくはずです。
次回、
キズの癒着④:実際の動きから癒着を考える。
では、
足首の動き、動作から癒着が及ぼす影響を具体的に考えてみたいと思います。
滋賀県大津市石山のリハビリ整体院
カラダ Design Lab.
カラダデザインラボ
堤 和也
癒着や足首の硬さにお悩みの方は是非ご相談ください。
↓