癒着に関する記事の続きです。
今回は、癒着と同時に生じる瘢痕組織についてまとめていきたいと思います。
「一次治癒」と「二次治癒」
まず創傷治癒について簡単に復習しましょう。
清潔で感染のない外科的に縫合された切開創の治癒を「一次治癒」と呼びます。
この場合、最小の瘢痕組織を残すだけで、肉眼的に元の構造とほとんど同じ組織に速やかに治癒します。
これに対して、組織の欠損が広範な場合に治癒する過程を「二次治癒」と呼びます。
この場合、欠損が大きいので細胞の再生のみでは元の構造に修復することが困難となり、この欠損部には多量の肉芽組織が産生されます。
そして、肉芽組織が繊維化するとともに瘢痕組織を形成するのです。瘢痕は、このような創傷治癒の最終的な結果として、再構成されたコラーゲンが完全には元通りにならないために起こると考えられています。
関節の動きを制限する癒着が、瘢痕化に影響している!?
傷口だけを見ていると、傷さえ閉じてしまえば万事OKのように感じてしまいますが、関節の動きを考えるとなかなかそういうわけにはいきません。
やはり癒着を残していると、この治癒過程にも影響を与えます。
なにが言いたいかというと…
骨など動きの乏しい組織と、皮膚や筋肉など動きの大きい軟部組織との間での癒着が生じていると、関節の動きに伴って傷口が引っ張られるようになってしまうのです。
(関節が動くと皮膚も筋肉も動きます。その動きに傷が引っ張られてしまうのです。特に関節の近辺で生じていると顕著です。)
すると傷の端同士が引き離されるように力が加わってしまい、せっかく綺麗に縫い合わせた傷口も広がってしまう羽目になります。
(特に抜糸以降に傷口が引き伸ばされやすい印象を持っています。)
するとどうなるのか?
一次治癒しかけていた組織が、二次治癒へと変化してしまいやすくなる可能性があるのです。つまり肉芽組織が引き伸ばされ、その範囲が広がると言うことです。
瘢痕化した組織はなぜ硬いのか?
創傷部位に生じた肉芽組織には線維化(線維形成)が起こります。
創傷治癒が進むとコラーゲンの合成が亢進し、分泌されたコラーゲンはコラーゲン同士、あるいは他の細胞外基質と橋渡しするように結合し張力を増していきます。最終的には、肉芽組織は密なコラーゲン線維、弾性線維などが存在する瘢痕組織になります。
そして傷口が小さくなるように収縮を起こし(創収縮)、正常の組織に比べてもろく、弾力性が少ない組織へと変わっていくのです。
瘢痕性拘縮を引き起こすと、周囲の組織の可動性が制限され大きな問題となります。
長期間経過した癒着・瘢痕組織は非常に硬い!
癒着に瘢痕化が伴い、それが強固となると癒着そのものを剥離することは非常に難しくなります。
結果、「剥離(癒着を引き剥がす)」ではなく、「柔軟性を高める」にとどまる場合が多いのです。
そのためにもしっかりと手術直後からの早期の傷への適切なアプローチが重要です。
時間が経過した癒着・瘢痕組織へのアプローチの考え方
関節の動きを阻害している原因となる部分の柔軟性を時間をかけて、徹底的に引き出していくことに他なりません。
初期の癒着の場合は、剥離された状態でしっかりと動きが保たれていれば比較的再発はしにくくなります。
しかし、まだまだ修復過程にある場合は、再度癒着することを予防するためにも頻回に動かしておく必要はあります。
時間の経過した癒着・瘢痕化した組織に対するアプローチは、剥離ではなく柔軟性を引き出すレベルにとどまってしまいがちですので、「一度柔軟性を引き出せたとしても再び元に戻りやすい」という難点があります。
そのため、一度柔軟性を引き出したら、それが戻らないようにセルフストレッチやエクササイズでしっかりと維持し、次回お越し頂いた際には以前の同じ元に戻っていない状態でさらに深い部分へのアプローチへと進めていく必要があるのです。
この部分をしっかりとクリアしていこうと思うと、頻回かつ時間のかけたアプローチが必要なことは言うまでもありません。
これが長期間が経過した癒着・瘢痕組織に対するアプローチの難しさです。
粉砕骨折や骨折の範囲があまりにも大きい、術後感染を発症した、怪我をした際に皮膚や筋肉などの軟部組織が大きくえぐり取られたなど、組織の損傷が非常に大きい場合は、動きを引き出していくことは難しい場合がありますが、骨折の状態や組織の損傷状態がそれほど大きくない場合は、適切なアプローチにより改善させうる可能性があるものです。
癒着による関節の動かしにくさ、身体の動かしにくさにお悩みの方は、諦めずに是非一度カラダ Design Lab.へご相談ください。
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@滋賀県大津市瀬田駅前
堤 和也