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一人一人の「お互い様」で築く地域福祉とその心

先日、大石市民センターにて「人権・生涯」学習推進協議会(略称「人推協」)主催の、

『人権を考える大津市民のつどい 2019年夏の集会』

にて、

『一人一人の「お互い様」で築く地域福祉とその心』

というテーマで1時間、講演をさせていただきました。

一人一人のお互い様で築く地域福祉とその心
(100名もの方がご参加されていました。)

伝統ある集会でのこの講演は本来、私がさせていただけるようなものではなく、
社会福祉法人 大石福祉会 介護老人福祉施設 リバプールの前施設長 である堤英幸(私の父です)がするはずだったのです。

リバプールのホームページはこちら↓
http://www.liverpool.or.jp/smarts/index/1/

その父がちょうど2ヶ月前に膵臓癌にて60歳という若さで亡くなりました。

父が亡くなる直前に、『大石』という地域の福祉がどうあるべきか、どのようにして地域の皆さんの福祉の心を醸成していく必要があるのかを私に話してくれるなかでこのようなことを口にしていました。

大石を『福祉特区』にしたい と。

父は学校を卒業後からずっと大石という地域で放射線技師として働き、14年前からリバプールの施設長として大石の地域で高齢者福祉のあり方を考え続けてきました。

今回の講演ではその父がどのように考え、どのように行動し、大石という地域をどのようなものにしていきたかったのかを、『私』というフィルターを通してではありますが、皆さんにお伝えし、

同時に、私自身が毎月介護予防にとどまらない若返りを目指す体操を通して地域のサロン(高齢者を中心とした地域の集まり)に参加させていただく中で感じる様々な問題点について、問題提起と同時にどのように解決していくべきかという今後の方向性を、畏れ多くもこのような若輩者の口からその考えも同時にお伝えさせていただきました。
(この体操は現在は同じ理学療法士であり、ヨガインストラクターでもある晴香さんに引き継いでいます。)

一人一人のお互い様で築く地域福祉とその心

そこでお話しした内容を一部抜粋、少し修正しながらご紹介したいと思います。

「できる」って良いこと?「できない」って良くないこと?

私自身、理学療法士として仕事をする中で、様々な動作の中での「できない」を「できる」に変えるということを生業にしています

その中で「できる」は「善」で、「できない」は「悪」だというような認識が少なからずありました。

「できない」は「欠陥」で「不自由」につながるものだと。

実はこのような考え方は、私に限ったことではなく、これまでの福祉も支援を必要とする人を「◯◯ができない人」として捉えてきていました。

福祉サービスが充実していくごとに薄れる地域の人間関係

福祉は社会保障制度と非常に繋がりが深いのですが、どちらも第二次世界大戦後からはじまっています。

戦後間もない頃までの日本は、“お互い様”といった地域の相互扶助により人々の暮らしは支えられていました。

それから、高度経済成長の中、工業化、都市化といった社会の変化とともに、
生活保護法、障害者福祉法、児童福祉法、老人福祉法、国民皆保険制度、国民皆年金制度、介護保険法などが制定され、そのサービスの質も範囲もどんどんと拡充される中で、助け合いの機能の多くが市場から購入するサービスや行政が提供する公的な福祉サービスとして外部化されました。

するとどうなったか?

専門的な知識を持った人材が増え、専門的なサービスが各施設等で受けられるようになり、サービスの質が高まるとともに、支えの必要な方をそのような施設に”あずける”ことで、その家族にとっては仕事に出やすくなったりと様々なメリットがありました。

しかしその反面、

高齢者はデイサービスや施設に入所したり、
障害を抱えた方は障害者福祉施設に行ったり、
子どもは保育園に行ったりと、

身近な環境から支えが必要な人が少なくなり、支えが必要な状況について理解されにくくなってしまっただけでなく、
自分ごととして考える(捉える)必要がなくなると同時に、行政等が担うものという認識が強くなり地域の中にこのような方々の居場所が少なくなってきました。

結果的に、

「できる」人の世界から「できない」人がいなくなり、
一所に寄せ集めるような状況になってしまった

のです。

地域におけるすべての方々が、
このような公的なサービスだけで満足のいくような対応できるかというとそうではないですよね。いつの間にか、助けが必要な状況やその程度に合わせて柔軟に対応することが難しい状況になってしまいました。

戦後間もない時代には差別などが根強く残っていたりとその頃にはその頃の様々な問題や課題がありましたが、その頃には当たり前のようにあった
地域における「新たな支え合い」の領域を
もう一度建て直し、拡大・強化すること
が現在改めて求められているのではないかと思います。

「できないからこそできること」ってなんだろう?













それは、

『頼る』

ということ。

自分でできないことがあると、他人に頼ることができるようになります。
そこに仕事が生まれ、雇用が生まれる。

福祉サービスに関係なく、これが社会を成り立たせているという事実を再認識してみましょう。

できないということに差はあれど、小さな「できない」は、みんないっぱい持っているんです。

多様な人々が、多様な分野、方法で活躍していくこれからの成熟した社会の中で、
「できない」ということに対する負の側面ばかりを見ていては見落としてしまう部分が沢山あります。

「できない」は「欠陥」ではなく『多様性の一部』であり、「不自由」だとばかり捉えてしまうのではなく『得意・不得意と同じ次元で考える』ことの重要性が見えてきます。

であるならば、「できない」という苦手なことに対する悩みは誰しもが抱えているものであり、
そのような方々を得意な「できる」で助け合えるような社会を築き上げなくてはいけないのです。

いつ、誰に、どのようなことが起こり、どのようなことができなくなってしまうかは誰にもわかりません。

※「できないこと」を礼賛しているわけではありません。「できないこと」の中でも、それが「できるようになりたいこと」であれば、それを達成するための努力は非常に重要であり意義深いものだと思います。

できない悩みは、誰に何をどのように相談すればいいの?

では、
「できない」ことによる悩みは誰に、どのように相談すればいいのでしょうか?

あなたが「助けてあげたい」と思える誰かの悩みはどのように知ればいいのでしょうか?

しかもその悩みは常に同じではなく、日々変化していきます。

どうすれば、日に日に変化する悩みを伝えること、知ることができるのでしょうか?

それには、

日常的に、定期的に、
「つながり」、「ふれあう」こと。

以外に方法はありません。

同じ地域に住むお互いのことを知り、認め合い、助け合い、支え合う。
これが地域福祉の心へと繋がっていきます。

他人に頼らず、何でもかんでも自分でできるようになることばかりにこだわるのではなく、
”困った時に頼れる依存先をしっかりと持つこと”の重要性を見出してみましょう。

実はそんな話をしている私も人に頼るということが苦手で、うまく相手に気持ち良いと思ってもらえるかたちで頼ることがなかなかできません…
そんな私自身にも向けた言葉でもあります。

『最強の依存は、最強の自立。』

この10年様々な地域で大きな自然災害が発生していることを鑑みても、地域における助け合いの機能を強化する必要があるのは火を見るよりも明らかですよね。

地域内の様々な問題を当事者として捉えられるようになるためのつながりを作れる環境づくりが今一番必要とされていて、今すぐにでも取り組み始められることではないかと思います。

父はそこに、地域貢献活動などといったかたちで大石内の各地域のサロンの立ち上げに関わっていきました。

地域の人々が定期的に集まって、たわいもないことを話し合ったり、何かしらの活動をするサロンのような場に、このような地域福祉を発展させるための非常に大きな可能性が秘められているのです。

地域福祉は、
住民と行政だけで成立させるべきものではなく、地域全体を巻き込んでいかなくては成り立ちませんし、続きません。”地域全体”の中には、
その地域の人々の暮らしを支えるサービスがあり、そこには営利目的とした経済活動も含まれています。この部分を見落とさずに考えてみましょう。

なぜ大型ショッピングモールが増え、地域にシャッター街が増えたのか?

答えは簡単で、生活する地域の中で買い物をしなくなったからです。

大型の商店の品揃えや真新しさには、なかなか小さな商店は太刀打ちできません。
さらに様々な店が集まって一度に用事を済ませられる便利さもあるのであればなおさらですよね。

でもそのような大型の店舗は一箇所に集約されており、なかなか身近な生活圏にはない場合がほとんどです。

では、あなたが元気に動ける間は良いですが、自由に動けなくなってしまったときにはどうしましょう?

あなたが今日した買い物がこれから先の地域のかたちを作っていると考えてみると、買い物という一つの行動に新たな意味を見いだすことができませんか?

地域という小さな経済圏でお金を回すと、地域は豊かになる。

小さな商店が、その地域で商いを継続していくにあたって、課題となるのが広告や宣伝の問題。

大型の店舗は、その資金力を利用して様々な方法を駆使して、購買を促す魅力的な広告宣伝を行います。

これはカラダ Design Lab.を経営していくにあたって、実際に私自身も直面し続けている問題です。

どのように地域の人に知ってもらって、お金を落としていただいて、事業を継続させていくか。

もちろん事業が継続できる大前提として、そこでお金を落とす人の役に立っているということがあります。

つまり事業が続くということは、単にお金儲けがうまいなどといった話ではなく、そこを利用される方にとってのメリットにもなっているということです。

同時に地域での集まり(サロン)を開催、継続的な運営を実施していくにあたって直面するのが、その資金面の問題です。

地域とのつながりの濃いサロンの中で広告宣伝をし、購買を斡旋することよってスポンサー(商店など)から資金を調達するということは、スポンサー、地域住民にとって非常に意味のあることではないでしょうか?

地域内でサロンを継続的に運営するために必要な考え方

地域の中にお金が増えていなくとも、その地域の中でお金がしっかりと回り続ければ地域は必ず豊かになります。

継続的にこのようなシステムを回していくためには、
この中の誰一人も犠牲になってはいけませんし、個人の善意ややる気に頼りすぎてもいけません。

「三方よし」で若い人にも魅力を感じてもらえるようなかたちが出来上がり、
若者が運営側にも、
サービスを受ける側にも回れるようになると、
次世代にも引き継がせられる地域の貴重な財産になります。

これから先を見据えた、活動の形態を見出していきましょう。

それに向けて、私にお手伝いができることがあれば、私にできる範囲でお手伝いさせていただきたいと思います。

是非、新たな地域福祉のかたちを発信し、他の地域の模範となれるような活動を作り上げていきましょう!

カラダと姿勢・動きをデザインする。
カラダ Design Lab.
カラダデザインラボ
堤 和也

@滋賀県大津市瀬田駅前

P.S.
今回、父と縁の深い大石でこのような話をさせていただきましたが、大石だけにとどまらず、様々な地域での活動にお悩みの方の目にもとどり、何か参考となれば幸いです。