なかなかマラソンの記事が書けずに申し訳ありません。
ようやくこの記事に時間が割けるようになりました。
【前回の記事】
→京都マラソン出場への道① 「痛くて走れない脚」と「つま先着地」
では、
「
身体よりも前方でつま先で着地するとスネの骨が前方へ倒れ、同時にふくらはぎの筋肉に過剰に力が入ることで、身体を前方へ進める動きに対してブレーキとなってしまう
」
ことについてお伝えしました。
(これから先の文章をお読みいただける方は、是非前回の記事も読んでみてください。
読んでくださっていることを前提に話を進めていきます。)
今回は視点を足首から膝・股関節周辺へ移して考察を深めていきたいと思います。
その前にもう一度走り方を確認しておきましょう。
<着地時の問題点>
②着地から深く曲がり過ぎる膝
まず、以下の写真で着地から地面を蹴るところまでの脚の動きを
「膝」を中心に見ていきましょう。
着地時に下腿(すね)が前方へ傾くと同時に膝が前に出ます。
写真を確認してみると、
つま先から着地した状態から、さらに膝が深く曲がっていくのがわかりますね。
この写真に床反力を想定して矢印を付け加えてみます。
(地面に着いた足底から重心に近いところへ矢印を向けました。
写真は静止画ですが、実際には前方へ進んでいるので実際の床反力はもう少し後方を向いているかと思います)
前回の記事でもお伝えしましたが、
・この床反力とは反対方向に身体の重みがのしかかり、
・カラダを前方へ推進させる時にはこの反力を利用します。
写真を見ていただくと、床反力のベクトルは常に膝の後方を通過していますよね。
ということは着地の間じゅう、膝は常に曲がる方向へと負荷が加わり続けていることになります。
(特に床反力の線と膝の位置が大きく離れていれば離れているほどに、その負荷は大きくなります。)
このままの状態で太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が働かないと、膝がどんどん前に出てしまい、膝に対して太ももが後方へ倒れてしまうので、それを止めようとこの筋肉が過剰に働きます。
この太ももの前の筋肉は、別名ブレーキ筋とも言われることが多く、前方への推進力に対してブレーキをかけてしまう働きのある筋肉でもあるのです。
(ちなみに、この床反力が加わっている状態で大腿四頭筋が働いて膝が伸びると、上方へ伸び上がるような動きとなります。なのでこの状態のまま、膝だけを伸ばそうと思っても、前進のスピードが早まるわけではありません。)
実際にブレーキ筋を感じてみよう!
もし可能であれば実際に走って身体で感じてみましょう。
走り始めて少しスピードが上がったら、急ブレーキをかけるように止まってみてください。
どこに力が強く入りましたか?
太ももの前ですよね。
そういうことです。
では、
どのように脚が動く、筋肉が働くと良いのか?
それは上半身の重みを可能な限り、常に前方へ進ませるような脚の使い方、
つまり脚を地面に着いた瞬間から上半身に対して脚を後方へ引く力が働き続けるような筋肉の働き方になるのです。
先ほどの状態での走り方だと、
ちょうど最後のフェーズで初めて、カラダを前方へ推進させるための力を発揮できるようになるのです。それまでの動きはブレーキ成分の強い動きです。
先ほどお伝えした通り、
ブレーキの働きをする筋肉は、太ももの前から膝蓋骨(膝のお皿)を介して、脛骨粗面(お皿の下の出っ張った骨)につながる大腿四頭筋。
着地するたびにこのような動きをしていると膝への負担が蓄積され、痛みを出現させるのは必至ですね。
この大腿四頭筋(もも前の筋肉)が
2つ目のブレーキ
(一番大きなブレーキ)
です。
次に股関節の動きに目を向けてみましょう。
<着地時の問題点>
③動きの乏しい股関節
股関節のある部分はちょうど一番右の写真の◯の部分です。
この股関節の動きを体幹と太もものなす角度で見ていきましょう。
右から2番目の写真から4番目の写真までの膝が深く曲がり続けていく間、股関節の角度はほぼ変化しません。
この股関節の動きもブレーキ成分を含みます。
身体を前方へ推進させる時には、
股関節から太ももを後方へ引きながら(伸展)、お尻の筋肉も縮む方向へ働く(求心性収縮)のですが、
前進に対してブレーキをかける際には、
股関節から太ももを前方へ曲げながら(屈曲)、お尻の筋肉は伸びる方向に働きます(遠心性収縮)。
接地時の股関節の動きとしては、写真だけでみると関節の動きのない等尺性収縮に近そうに見えますが、
実際には膝の動きと同時に股関節の筋の働きもまた変わりますので、お尻の筋肉はほぼ遠心性収縮の状態ですね。
つまり、
膝が曲がり過ぎるのを「ふくらはぎ」「もも前」と一緒に「お尻」で止めている状況です。
このお尻の使い方が、
3つ目のブレーキ
になります。
実際に筋肉に痛みが出現していたのも、この3つの部分です。
硬結(筋が硬くなっている部分)、圧痛(押さえると痛い)も強く認められました。
そして、
一番左(最後)のフェーズでようやく股関節を支点に太ももが後方へと動き始めます。
ふくらはぎともも前とお尻の筋肉でブレーキをかけ続けている間、股関節はほぼ動かず、
ブレーキから解放された瞬間に股関節を伸ばして脚を後方へ蹴り出し、新たに推進力を生み出すという状況です。
この一番左の最後のフェーズで推進力を引き出しているのですが、
脚を地面についているそのほとんどの時間をブレーキに費やし、推進力を生み出しているのはほんのわずかな瞬間だけであることが見えてきますね。
さらに脚を後方へ引く動き(股関節の伸展)が小さいので、
・発揮できる力も小さく、
・骨盤のひねりの動きも上手く引き出されず、
・腕と脚の連動性(動きのつながり)もあまり認められません。
重心の上下動が大きい走り方
この走り方を言葉で表現してみると、
「ジャンプ」しては「着地」を繰り返す、重心の上下動が大きい「ぴょんぴょん走り」
と呼べそうですね。
本来脚をついている間、地面からの反力をもらって身体を前方へ推進させるはずが、その大半が着地時のクッション(衝撃の吸収)に費やされており、
ジャンプするための力を最後の瞬間に発揮するものの、その力は前方への推進力以上に上方へ跳ね上がってしまう力が大半となってしまう、非常にロスの大きい、勿体無い走り方です。
痛みを出現させてしまうものの、
この時の走り方でもしっかりと結果を残してこられた方ですので、
この状況から抜け出し、走る時の身体づかいが改善されてこれば、
痛みが改善されてくるだけではなく、よりパフォーマンスが上がってきそうですよね。
と、
このようなことを走り方などを確認しながらその場ですぐに判断しています♪
今回は、矢状面(体の横から見た面)からの動きだけで考察していますが、実際には前額面(体を前から見た面)での重心位置や水平面(体を上から見た面)での動きも同時にチェックしながらその動きをとらえていきます。
もちろん外見的な動きだけではありません。
しかし、そこまで考察を深めてしまうと、かなり話が複雑になり専門家でもないとわからないと思いますので、その点は割愛させていただきます。
(このように実際に文字に起こして伝えようとすると、
感覚的に捉えて自分なりに納得しているものに、まず整合性を持たせた上で、
理解していただけるレベルに表現を落とし込みながら、
さらに誤解を招かないようにも注意するのがなかなか難しいですね。。。)
(理解しにくい点、おかしな点などございましたら相談フォームからご指摘いただけると幸いです。)
次回は、
この走り方を「どのように変え、実際にどのように変わっていったのか」
をご紹介していきますね。
お楽しみに♪
※※※
タイトルに「曲がりすぎた膝」とありますが、膝を曲げたらダメというわけではありません。
膝の動きやその周辺の筋出力には、
重心位置だけでなく、地面との接地部位、筋力を発揮している部位、膝以外の関節の動き、連動性など
全身の動きが関わってきます。
今回の走り方でこれだけ膝が曲がってしまい、「もも前」を中心に「ふくらはぎ」「お尻」に力が強く入ってしまうことの大きな原因は、
・つま先接地
・後方に残った重心位置
・股関節伸展への動きが少ない
が考えられます。
(※動画・写真で見て取れる部分のみ記載)
こちらの方の走るという全身運動の中での今回の「膝」という位置付けで考えてみてくださいね。
※※※
滋賀県大津市石山のリハビリ整体院
カラダ Design Lab.
カラダデザインラボ
堤 和也