カラダと姿勢・動きのトータルケアスタジオ カラダ Design Lab.®︎

側弯症は背骨の構造だけの問題ではない。痛みはどこからくる?

前回の記事に引き続き、
側弯症による症状の出現の機序や原因、そして改善へ向けた取り組みなどに対するカラダ Design Lab.での考え方をお伝えしていきます。

前回の記事→側弯症にお悩みの方へ①


CONTENTS


側弯症は背骨の構造だけの問題ではない。

前回は、側弯症の方の背骨が単に左右に弯曲しているだけではなく、「ねじれ」と「丸める/反る」動きが加わり、その症状を複雑化させていることをお伝えしました。

ではなぜこのような背骨の弯曲を生み出し、それを強めてしまうのでしょうか?

力学的な視点からその原因を考えてみたいと思います。

背骨は頚椎から胸椎、腰椎、仙骨、尾骨まで合わせて26もの骨が繋がって形成されています。重力に対して上体を起こした状態を保つときには常に、尾骨を除いたその他すべての骨を支点として、それより上に位置する重量の影響により右にも左にも、前にも後ろにも傾きやすくなります(前述のようにこれに「ひねり・ねじれ」も加わるのです)。

正常と側弯症(イメージ)

本来、一つ一つの骨の上に次々に積み木を積み上げていくようなイメージで、まっすぐに骨が並び、筋肉が適切に働きながらその位置関係を保つことができているとそのようなことも起きにくいのですが、積み木が崩れ落ちそうな程度まで傾きが生じてくると、その傾きをなんとか止めようと筋肉が強く働くことになります。


すると筋肉が背骨を支えるために常に働き続けてなくてはいけないような状況が生まれてしまうのです。

逆に筋肉を働かせずに背骨の傾きを制御しようとすると、関節の動きの最終域で無理やり固定して傾きを止めるような状況になり、関節そのものや関節の構成体に過度に負担をかけ、その状態が長期間継続されることで関節を構成する組織を変性・変形させてしまいやすくなります。

S字を描かせる2つのメカニズム

側弯症の方は、
このように筋のように自ら働いて背骨を安定させようとする能動的なシステムと、関節の構成体などのように動きの最終域で固定することによって安定させようとする受動的なシステムを過剰に働かせるによって背骨の傾きを止めて何とか上体を起こした姿勢を保たせようとするのです。
(側弯症のない方でもこのようなメカニズムは存在しますが、過剰に働かせることは少ないです。)

すると右に傾けばその上部は反対に左に傾き、左に傾けばその上部は右に傾き…とS字状のカーブを描くようになり、最終的に頭部をまっすぐに保持させられる位置で安定させられるように背骨全体でバランスをとるのです。

S字状のカーブが生み出されるイメージ
(S字状のカーブが生み出されるイメージ)

では痛みなどの症状はどのような部位から出現してくるのか?

このようにS字に弯曲した背骨は、筋による能動的なシステムと関節構成体による受動的なシステムで安定化させるメカニズムが強く働きます。

すると筋に過度に負担がかかれば、筋肉由来の痛みが出現し、
関節に過度に負担がかかれば、関節構成体由来の痛みが出現するのです。

姿勢の取り方や、部位によって負担のかかり方は大きく異なるため、背骨の状況を詳細にチェックした上でアプローチを組み立てていく必要があります。

では関節構成体の例を挙げて考えてみましょう。

背骨と背骨の間には椎間板というクッションがあります。このクッションに負担(局所的な圧)が加わりすぎると、椎間板ヘルニアを引き起こしやすくもなります。

腰椎椎間板ヘルニアの病態

さらに背骨の中心には脊髄があり、背骨と背骨を上下でつないでいる関節の近くからは脊髄から枝分かれした神経(神経根)が通過します。

脊椎・椎間板・脊髄・神経根

この神経が通り抜ける穴を椎間孔といいますが、この椎間孔が狭まると(椎間関節の左右の傾き・ひねり・反りなど動きによる椎間孔そのものの狭小化、椎間関節に生じた骨のトゲやヘルニアによる圧迫など)、この神経を圧迫し痺れや痛み、感覚が鈍くなる、力が入りにくくなるなどの症状を引き起こすようになります。

腰部脊柱管狭窄症の病態

椎間板、椎間孔、脊髄、神経根、関節、筋など様々な組織で痛み(腰痛・背部痛など)や痺れなど様々な症状を引き起こすため、側弯症の方のカラダをの状態を捉え、適切にアプローチしていくにはそれらがどのように関連しあっているのかを見極める「目」が非常に重要となるのです。

(つづく)

次回で今回のシリーズは最終回です。

次回は、
・側弯症が起こる原因は?
・カラダ Design Lab.での取り組みの考え方

についてまとめていきます。

カラダと姿勢・動きをデザインする。
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カラダデザインラボ
堤 和也

@滋賀県大津市石山